Nmoominのブログ

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ロンドンで本場フィンランド式サウナを体験する

海外に来て日本との違いに戸惑ったり不満に思うことはたくさんあるだろうが、やはり一番の違いはなんといっても風呂周りではないだろうか。 日本では小さい頃から湯船に浸かることが当たり前のように育てられるし、日本が世界に誇るべき文化の一つとしての銭湯がある。    

銭湯経営者側の高齢化や跡継ぎ問題などで街にある老舗の銭湯などは廃業の危機に立たされているようだが、一方で銭湯を文化として楽しみ発信していくなど新しい方向で銭湯文化を続かせていこうという動きも見られる。さらに最近では若者を中心にサウナブームが到来しているようで、サウナ付き銭湯やスーパー銭湯などが再注目されている。

かくいう自分もサウナにハマり始めた一人である。きっかけは多分ネットのなにかで読んだ、交代浴で整う!みたいな記事だった。 どれどれと思い最初に試してみたときは水風呂から出たあとに頭がふらつき気持ち悪くなってしまいもう二度とやるもんかと思った記憶がある。 以来、交代浴というかサウナ自体嫌厭していたのだが、おそらく何かの拍子にまた試してみたのだと思う。多分水風呂の温度がちょっと高めのところで挑戦したからか、その時にようやく整うということがどういうことか何となくつかめたような気がした。 このようにコツをつかめてきてからは、疲れたり体の調子が悪く感じるときに銭湯・サウナに行くようにしている。幸い、大学の近くにはいくつかスポットがあるので大学帰りに寄れるのが嬉しい。*1   

さて、ロンドンにきて体の不調を感じたら、肩や腰が重く感じたらどこへ行けばいいのだろうか。世界的な大都市なのでいわゆるラグジュアリーなスパはあるだろうと踏んでいた。ところが調べてみるとそれだけでなく、サウナの本場であるフィンランド式のサウナがどうやら市内にあるようなのだ。そして面白いのが、このサウナがある場所がなんと教会の中なのである。

lontoo.merimieskirkko.fi

この教会というのは、ロンドン在住のフィンランド人のための教会で、中にカフェや宿泊所も併設されている。まさに故郷を離れロンドンにやってきたフィンランド人達にとっての憩いの場、コミュニティスペースにもなっているのである。 上述のラクーアや新宿のテルマー湯でロウリュウを体験したことはあるが、どうもやはり日本に輸入してきました感が否めない。ロンドン在住のフィンランド人のための教会に併設されたサウナということを考えれば、間違いなく本場のものに近いはずだという安易な理由により早速某日にたずねてみることにした。

この教会があるのはロンドンの南東エリア、overgroundのRotherhithe駅が最寄りである。駅から徒歩5分ほどで教会にたどり着ける。

入ってみるとこじんまりとした街の教会といった雰囲気だが、併設のカフェではフィンランド人の紳士淑女が談笑中。温かい雰囲気の教会であることが伝わってくる。

さて肝心のサウナの情報だが、曜日ごとに男女それぞれ時間が決まっている男女入れ替え制で一回6£、学生や18歳以下の子供は4£。事前に予約しておくと昼間の時間にプライベートに使うこともできるよう。(その場合は20£程度)

HPの画像を見る限りサウナはとても小さそうなので、なるべく男性の開始時間に間に合うように行ってみた。

扉をくぐり、地下に続く階段を降りていくと、脱衣所に到達。当たり前だがここからは写真が撮れない。 非常に狭いプールの更衣室のような内装でロッカーはなく、代わりにベンチと綱引きのロープのように太いひも、それにかばんがかけられてるようにフックがついている。この簡素な感じ、本物を感じる…

どうやら既に数人がサウナを満喫しているようなので急いで脱いでサウナ室へと向かう。サウナ室の手前にはシャワー室があり、ここでまずは汗を洗い流す。水風呂は当たり前だがないのでサウナ後もここで水シャワーで体を冷やす。

さて肝心のサウナ室だが、事前に調べていた通り非常にこじんまりとしていた。真ん中にサウナ石が鎮座していて、その両端に座れるようになっている。ぎゅうぎゅうにつめて7人いけるか…といった大きさである。 特に体格の大きいフィン男児が集まれば5,6人ですっかり手狭になるくらいだ。

https://lontoo.merimieskirkko.fi/wp-content/uploads/sites/9/2017/09/21752618_1660748460632840_8458279002668781075_o.jpg 画像は公式HPより

中に入るとすでに寡黙なフィン男児が黙々とサウナに身を委ねていた。しばらくすると1段とベテランに見える男性がロウリュウをする。本場仕込のロウリュウはどんなものだろうと思っていたが、彼が石に水をかけた途端にものすごい水蒸気が舞い上がり、その一瞬後とんでもない熱風が襲ってきた。あつい、あつすぎる。特にその日髪を切ったばかりだったのも災いし耳の裏が焼けるようにあつい。

この熱さが本場フィンランドなのか…と呆然としていたのもつかの間、先程ロウリュウをした男性やはりかなりのベテランらしくその後もしきりにロウリュウをする。もうこちらは一回目から限界なので耳を熱風から守るのに必死である。これはもうある種の修行である。京都でお坊さんが滝行をするかのように、フィンランド人はサウナ行をするのである、多分。

そうこうしているとすぐに体が火照ってきて限界を迎えたので、退室。こう殺人的な熱さに身を委ねていると水シャワーがとんでもなく気持ちいい。そうか、そのためのあの熱さ…とすぐに理解する。 シャワーを浴びたあとは、日本のサウナのように外気浴する場所はないので、その代わりに脱衣所がクールダウンする場所である。 サウナの中では寡黙だった彼らもサウナから上がってくれば徐々に話し出す。ここに来るのは初めてだが、中々よくできている、もう少し大きければいいのに…等々。初めて会った人たちが、裸であることも相まって緊張をほぐしてすぐに打ち解け始める様子は微笑ましい。

そういえば、日本を旅立つ前にフィンランドでロングランを達成しているというサウナ映画を見た。その名も「サウナのあるところ」。

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映画といっても、いわゆるストーリーのようなストーリーはなく、90分間ずっとサウナの中でフィン男児達が会話する様子を見る映画である。その組ざっと10弱だと思うがそれぞれがサウナの中で話す話は様々、でも殆どがシリアスなものである。離婚して離れ離れになってしまった娘に会いたいとか、過去の犯罪歴を懺悔したりとか。そんな重苦しくシリアスな雰囲気を、間の悪い画面を、サウナがそしてロウリュウの蒸気が包み込んでくれる。会話の合間合間に挿入されるフィンランド雄大な、しかし凍てつくような自然と暖かなサウナのコントラストが画面の中に明かりを灯す。

普段は寡黙な彼らでも、サウナの中では饒舌に語りだす。そんなメッセージを映画から受け取ったが、まさしくそんな雰囲気がロンドンの中の小さなサウナにも確かにあった。

サウナを終え教会から足を踏み出したときロンドンは既に冬の風が吹いていたが、体もそして心も温まり雑念は汗とともに流れ落ちた、そんな気がした。

*1:特に後楽園のスパラクーアは、湯やサウナの種類が豊富なだけでなく休憩所も広々していて作業スペースもあり最高である。値段が高いのと岩盤浴コーナーによく出没するペッティング寸前カップルがたまにキズ。