Nmoominのブログ

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2019年2月に見た映画まとめ

今月は、中旬に出張がありその準備で忙しかったので、毎週映画館に行くことは叶わなかった。 だが、Netflixと合わせて4本見れたのでよかった。後実は某日に試写会にも行ってきたのだが、守秘義務があるためここではコメントしないでおく。

来月、再来月とアカデミー賞関連映画の公開などもあるし明日からも積極的に映画を見に行きたいと思う。

では、今月見た映画をまとめよう。

1.映画館にて

ジュリアン

julien-movie.com

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ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞、また『万引き家族』も受賞したセザール賞を獲得した作品で、DV夫から母親を守るため必至に生きる息子ジュリアンの話。

上記に貼った予告から察した雰囲気では両親ともについている親を知っているジュリアンがキーとなるサスペンスもの…?

と思ったら全く違う話であった。誤解の原因の一つに邦題『ジュリアン』が一役買っている気がするのだが。

その実は、予想した意味とは違う意味でサスペンス。BGMを使わず不安を煽るような環境音と、各登場人物の視線にフォーカスしたカメラワークは観客をドキドキさせるのに十分だ。 父親のしつこい脅しに耐え続けるジュリアンの描写は痛々しく、華やかなパーティーシーン(ここのカットはどれもとても綺麗で美しい!)でも、ジュリアンの家族らのどこか不安げな面持ちには物語の行く末がうまくいかないことが暗示されている。

このように社会派サスペンスな映画だと一見みえるのだが、その予想をさらに上回るのがラストシーン。ここで描かれる怒涛のホラー的展開は凄みがあり、それまで意図的に静かに作られた画面が爆発する様は圧巻。

時限爆弾がカウントダウンをはじめ、爆発に至るまでを描いたような作品である。

ちいさな独裁者

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第二次世界大戦末期、敗戦濃厚なドイツでは兵士の脱走とそれに伴う付近の村における略奪行為が頻発していたそうである。 主人公もそんな脱走兵の一人。

冒頭、軍から脱走した彼を酒を飲みラッパを吹きながら車で追いかけるドイツ軍たち。まるで狩りを楽しむかのような象徴的な始まり方で、戦争末期のドイツ軍の状況を端的に説明している。

命からがら逃げ出した主人公が偶然見つけたのがドイツ人将校の制服。ここから彼の人生は狂い出す。

たまたま通りがかった上級兵を手下に引き入れた彼は近くの村へと乗り込み、早速将校のフリをし始める。もともと機転が利くのだろう、多少の葛藤や恐怖の描写もあるが、基本的には大胆不敵に身分を偽り手下を増やし(酔っぱらいの一人は明らかに彼の正体に気づいている風であるが)行動していく。

次の滞在先である、犯罪者収容所では法律を無視し彼も同類である脱走兵や盗人たちをユダヤ人収容所ばりに処刑していく。ユダヤ人ではなく、同胞であるはずのアーリア人も容赦なく殺す描写を通じて、彼が完全に変容してしまったことが浮き彫りにされる。

その後も彼は勝手に自身の名前を冠した"親衛隊"を名乗り、白旗を掲げた市民を殺害し所持品を略奪、泊まったホテルでは乱痴気騒ぎを繰り返したりと傍若無人の限りを尽くす。

今作品の監督は「 彼らは私たちで、私たちは彼らだ。過去は現在なのだ。」 と述べているが、劇中では権力のシンボルとして制服を用いることでその威力とそこに吸い寄せられる人間の暗部を躊躇することなく切り取り描いている。 驚くのは、この映画が実話を基にしていて、主人公の脱走兵はなんと齢21歳という若さだったそうである。なんと大胆不敵なことだろう。

エンドロールで彼ら親衛隊が現代ドイツの街で暴れる演出は、「帰ってきたヒトラー」を連想させる。 現在のドイツの政治情勢(保守派の台頭)を考慮した上で、こうした演出の映画が一つと言わずでてきたというところにドイツ映画人らの危機感の現れを感じた。

女王陛下のお気に入り

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主演のオリヴィア・コールマンがアカデミー主演女優賞を獲ったことが記憶に新しい。自分が見に行った日が、まさしくオスカーの発表の日だったこともあるのか、映画館はほぼ満員だった。

18世紀、フランスと戦争中にあるイギリスの王室の話。

気まぐれな性格の女王アンはその側近サラに公私とともに頼りきっていた。 そんな折、親戚の伝手で没落貴族のアビゲイルが宮中にやってくる…というあらすじ。

女王をめぐる、女性3人の愛憎関係に1秒たりとも目を離す暇はない。相手をいかにだしぬくか互いに策略を巡らせながら、気まぐれな女王はその様子すら楽しもうとしている。女王役のオリヴィアコールマンはまさに怪演であり、一度見た時から脳裏にその姿が焼き付いて離れなくなってしまうほどである。

エマストーンのさらりとした表情の中に隠れた悪女の演技には思わずニヤけずにはいられない。彼女の作品は色々見ているけど、今作の演技の振れ幅は素晴らしく彼女の違う魅力を見せてもらった。

イギリス宮中の煌びやかな部分も、醜悪な部分も人間の欲望というものをたっぷりと描いている良作である。 ラストシーン、気丈に振る舞うサラとそれと対照的に空虚な目をしたアンとアビゲイル、そして無垢なウサギたちの対比はまさに諸行無常である。

2. Netflixにて

ROMA ローマ

www.netflix.com

各地の映画賞をかっさらっていき、ついにはアカデミー賞でも外国語映画賞を始め3つの賞を受賞した作品。

ローマというとイタリアの話かと思うかもしれないが、舞台はメキシコの高級住宅街にある"ローマ"という場所。そこに住む白人家族の家で住み込む家政婦が主人公のお話。

カメラが6Kの非常に高性能のものを利用しているにもかかわらず、あえてモノクロで撮られている。非常に画角が広くほとんど一貫して俯瞰的に、ゆったりと動くカメラワークの中で登場人物たちの生活を非常に写実的に切り取っている。ワンカットワンカットがまるで静物画を見ているような美しさを秘めている。 彼らの地続きな生活をずっと見ているような、そんな感覚に陥る。

役者はほとんどが素人らしい。それらを逆に生かして撮影はアドリブを多用しながらすすめられたとか。こことカメラの使い方の相性がいい。

話の流れは、登場人物、主に家政婦の主人公が直面する問題や不条理とどう向き合って人生を紡いでいくかということが中心。 家政婦として働く主人公の機敏な感情を見事に画面上にすくい取っていて鑑賞後の余韻が心地よい。

こんな上質な映画がNetflixで見られるなんて、贅沢というべきか。でも映画館のスクリーンもぜひともみたい。アカデミー賞をとったら、どこかでかからないだろうか、と思っていたら本当に取ったので期間限定でいいからやってくれないだろうか。