Nmoominのブログ

日々の記録を主に

2019年振り返り書きなぐり

 

2019年の始まりは、予想もしていなかった場所で迎えた。

 

年末からイスラエルエルサレムで行われるウィンタースクールに参加していたのである。

イスラエルといえば、小さい頃からニュース番組でよく話題にあがる、中学校の歴史でも習ったきな臭い国という印象があったため、行くことが決まったときは少しばかり緊張した。

 

実際行ってみれば、怖いことは特になく冬の日本に比べれば遥かに過ごしやすい気候だった。ただ、イスラエルというか中東料理が自分の口に合わなかったので食の面で苦労したことはあったけれど。

週末におとずれた死海の景色は一生忘れることはないだろう。

 

イスラエルから帰国してから数ヶ月の間はこの一年で一番メンタル的にきつかった。

というのも研究が全く進まなかったから。一体何を調べているのか、その先に何があるのか自分でもわからずイライラしていた。この時期に現状を変えようと留学を考えたのは今振り返るといい決断をしたと思っている。

 

なんだかんだあり今年も学振を出すことになったので4月5月はこればかりやっていたと思う。

ちょうどGWの終わり頃に高校時代から10年くらい続けていた合唱をやめることにした。一番直接的な理由は継続的に練習に参加することが難しくなったからなのだが、それ以外にも思うところは色々あったので。ここに書くことではないが、もうしばらくは合唱を演者としてやることはないと思う。

 

 

5月の終わりから6月の終わりまでは京都で1ヶ月の研究会があったのでずっと京大の近くに滞在していた。東大よりも京大のほうがキャンパスの周りに学生向けの安くて美味しいごはん屋さんがたくさんあるように思った。

ゴリラの肉厚ハンバーグがお気に入りである。ちょっと味が濃いけれど。

 

京都いる間は飲み食いをとにかく楽しんだ。(もちろん研究もした。)

わざわざ京大から四条の方まで出かけて立ち飲みの居酒屋をはしごしたり、日本酒のバーでしっぽり飲んだり。東京の飲食店よりも京都は街自体がコンパクトなこともあるのかお店側とお客さんの距離が近いように思った。嫌がる人もいるだろうが、東京砂漠に慣れきってしまった身としては心地よかった。お酒もいつもより進んだと思う。結果3,4キロくらい太ったと思う。

 

 

7月は共同研究者の教授が台湾から東京に滞在にきて集中して議論ができたので研究がまとまって進んだ。

 

8月は後半にニューヨークへ研究会へ参加するために渡米した。ニューヨークといってもマンハッタンではなく、ロングアイランドのはしっこである。ここが同じニューヨーク州なのかと驚くくらい景色が違うので驚いた。

研究会があったのはこんな牧歌的な景色が広がるところ。しかし毎日いると流石にすることがなくなるので週末はマンハッタンへ。ただ去年もいったことがあるので今年はブルックリンの方へ繰り出した。セントラルの方と違って街自体がアーティスティックで歩いていて楽しい。ただ沿岸部は再開発が進んでいるらしく高層マンションが立ち並んでいたが。

 

ニューヨークから帰ってきては、9月末からクリスマス前まで上で書いたようにイギリスに留学することになった。留学というのが正確なのかはわからないが、手続き上、先方の大学にapplyし学生証ももらったので一応留学ということにしておく。

 

 留学する前はこんな感じで弱気であったが、成果があがらなかった、ということはなかったと思う。滞在先でホストしてくれた教授がうまい具合にテーマをくれたので、自分はそれに従って計算しただけ、というのが実情だが計算がうまくいっただけ良しとしたい。なんとか論文にまとめられたらうれしいと思う。

さて今回の3ヶ月の滞在は、もし再来年からポスドクをする場合に海外で研究がやっていけるのか、生活できるのかをテストしてみたいという気持ちがあって挑んだものだった。

向こうではなるべく学生というよりもポスドクとして過ごそうと努めたつもり。現地の学生とよりもポスドクとなるべく絡むようにしたし、ジャーナルクラブでトークもさせてもらった。ランチも一緒に行くようにした。ホストしてくれた教授は中々忙しいらしく週3日ほどしか大学に来ていなかったが、おおよそ毎週アポも取らずふらっと居室までいく自分と議論に付き合ってくれて本当にありがたかった。自分のような幼稚園児レベルの英語でも我慢強く議論続けてくれる素晴らしい人だった。このおかげでイギリス滞在の間にスピーキングは以前よりもかなりマシになったと思う。ただ、帰国して早速英語を話す機会が当たり前だが激減したためどうにか継続して英会話を続けたいという気持ちがある。後リスニングは結局微差程度しか改善したかったように思う。

 

滞在中は殆ど毎日ビールを飲んでいた。というのは嘘だがツイッター上でビールの写真をあげまくった結果そのような印象づけに成功したようである。

イギリスのパブはだいたい3~5ポンド程度でUK1パイント飲めるため日本よりも遥かにコスパがいい。そして、日本では中々飲めない生のギネスが当たり前のように飲める。日本にいるときはあまり感じなかったが、これがなんとうまいこと!素晴らしく滑らかな舌触りとまろやかさで何杯でも飲めてしまう味なのである。ぜひイギリスに行く予定がある人は騙されたと思ってパブでギネスを頼んでほしい。

 

 これはギネスではない。

 

 

そんなこんなで高速で2019年を振り返った。このブログは紅白歌合戦とガキ使を交互に見ながら書いている。

以下短く総括する。

研究的には今年はあまり振るわなかった。結局論文は一本しか出せなかったし、これを出すまでの数ヶ月が結果がほぼあるのに執筆がほぼずっと律速段階にあった。共同研究の仕様上しょうがないけれど。イギリスで始めた研究はどうにかなると信じて来年は3本は出したい。D論もあるので。

プライベートでは元旦に毎週映画を見るといったが、3ヶ月くらいで早速リタイアした。それ以降は中々映画を見る時間がとれず、日本から離れていたこともあったりして思うように見れなかった。来年はもっと積極的に映画を見ていきたい。

 

それではよいお年を。

ロンドンの地下鉄でノイズキャンセリングヘッドホンが大活躍している話

ロンドンに来てからというもののほぼ毎日大学への通学で使っているのが地下鉄、いわゆるUndergroundだ。この地下鉄、いわゆる日本の地下鉄のようなものを想像していくとそれよりも遥かにクオリティの低い劣悪な何かが待っている。

まず、(路線によっては少々大きいものもあるが)列車の筐体がひどく小さく狭い。 渋谷に行くときにどうしても仕方ないときに乗るあの銀座線よりも一回り小さいものを想像してもらえれば、どのくらいのものか大体おわかりいただけると思う。銀座線は日本人の体格が比較的小さいこともあってまだマシな環境だけれど、ロンドンではそうはいかない。 朝の通勤通学ラッシュ時の満員電車は閉口せざるをえない。日本にいるときは大学まで電車に乗っていなかったので、まさかこちらに来て満員電車に乗る羽目になるとは思ってもいなかった。

筐体が狭いことだけが問題なのではない。日本では、鉄道会社のたゆまぬ努力によって日々列車に改良が加えられどんどん新型車両が投入されていく。ところがロンドンでは基本的に筐体の表面に赤錆がついていたりスプレーで落書きがかかれているような何十年選手なんだみたいな列車が平気な顔をして走っている。 そうすると何が問題かというと、基本的に空調が終わっている。既にこちらでは日中の平均気温が10℃程度の寒さであるが、ラッシュ時の地下鉄など蒸し地獄になることを覚悟しなければならない。

極めつけは、基本的に地下鉄では携帯の電波が圏外になることだ。日本では地下鉄で電波が届きにくくなるなんて千代田線の北千住町屋間くらいでしか体験したことがないが、こちらでは圏外ではデフォルトなのだ。スマホに侵されきった現代人から生まれたばかりの子鹿に逆戻りである。

毎日片道1時間弱、電車が遅れたり(よくある)運休になったり(たまにある)するとさらに時間がかかるわけでこの時間をいかに使うかというのが問題なわけだが、電波が入らないといかんせんやることが限られてしまう。周りを見ても、スマホをいじってる人もそこそこに新聞や本を読んでいる人が割と印象がある。 自分も基本的には音楽を聴きながらkindleで読書することが多い。

この地下鉄で音楽を聴く際に以前レビューもしたソニーノイズキャンセリングヘッドホンが大活躍している。(やっと本題に入った)

nmoomin.hatenablog.jp

実をいうと、イギリスに飛ぶ直前までこのヘッドホンを使うのをちょっとやめていた。なぜかというと、夏だったので蒸れるのと普段持ち運ぶには小さいサイズのイヤホンの方が便利だと思ったから。最近流行りの完全独立型ワイヤレスイヤホンがどんなものか気になっていたので1万円くらいのエントリーモデルを買って使っていた。日本で使う分にはそこまで悪くなく使えていたと思う。 しかし、ロンドンの古臭い地下鉄に乗ると列車の走行音がうるさくてあまり音楽に集中できない。そこで行きの飛行機で使って以来仕舞ってあったXM-1000XM2をひっぱりだしてきたというわけである。

一度離れていたこともあって、今一度使い始めると余計に良さが分かる。既に新しい機種が出て型落ちとなってはいるが、ノイズキャンセリングの性能は相変わらず素晴らしい。スイッチを入れた瞬間に静寂を手に入れ音楽に集中することができるのは本当に魅力的だ。

ノイズキャンセリングだけではなく、元々のヘッドホンの音質の良さも再確認することができた。今までエントリーモデルのイヤホンで聞いていたのがバカバカしくなるくらい音の厚みが増えて音楽を聴くことが楽しくなったのは良かったと思う。

とにかく地下鉄の劣悪な環境のおかげで読書と音楽が捗るということである。

ロンドンで本場フィンランド式サウナを体験する

海外に来て日本との違いに戸惑ったり不満に思うことはたくさんあるだろうが、やはり一番の違いはなんといっても風呂周りではないだろうか。 日本では小さい頃から湯船に浸かることが当たり前のように育てられるし、日本が世界に誇るべき文化の一つとしての銭湯がある。    

銭湯経営者側の高齢化や跡継ぎ問題などで街にある老舗の銭湯などは廃業の危機に立たされているようだが、一方で銭湯を文化として楽しみ発信していくなど新しい方向で銭湯文化を続かせていこうという動きも見られる。さらに最近では若者を中心にサウナブームが到来しているようで、サウナ付き銭湯やスーパー銭湯などが再注目されている。

かくいう自分もサウナにハマり始めた一人である。きっかけは多分ネットのなにかで読んだ、交代浴で整う!みたいな記事だった。 どれどれと思い最初に試してみたときは水風呂から出たあとに頭がふらつき気持ち悪くなってしまいもう二度とやるもんかと思った記憶がある。 以来、交代浴というかサウナ自体嫌厭していたのだが、おそらく何かの拍子にまた試してみたのだと思う。多分水風呂の温度がちょっと高めのところで挑戦したからか、その時にようやく整うということがどういうことか何となくつかめたような気がした。 このようにコツをつかめてきてからは、疲れたり体の調子が悪く感じるときに銭湯・サウナに行くようにしている。幸い、大学の近くにはいくつかスポットがあるので大学帰りに寄れるのが嬉しい。*1   

さて、ロンドンにきて体の不調を感じたら、肩や腰が重く感じたらどこへ行けばいいのだろうか。世界的な大都市なのでいわゆるラグジュアリーなスパはあるだろうと踏んでいた。ところが調べてみるとそれだけでなく、サウナの本場であるフィンランド式のサウナがどうやら市内にあるようなのだ。そして面白いのが、このサウナがある場所がなんと教会の中なのである。

lontoo.merimieskirkko.fi

この教会というのは、ロンドン在住のフィンランド人のための教会で、中にカフェや宿泊所も併設されている。まさに故郷を離れロンドンにやってきたフィンランド人達にとっての憩いの場、コミュニティスペースにもなっているのである。 上述のラクーアや新宿のテルマー湯でロウリュウを体験したことはあるが、どうもやはり日本に輸入してきました感が否めない。ロンドン在住のフィンランド人のための教会に併設されたサウナということを考えれば、間違いなく本場のものに近いはずだという安易な理由により早速某日にたずねてみることにした。

この教会があるのはロンドンの南東エリア、overgroundのRotherhithe駅が最寄りである。駅から徒歩5分ほどで教会にたどり着ける。

入ってみるとこじんまりとした街の教会といった雰囲気だが、併設のカフェではフィンランド人の紳士淑女が談笑中。温かい雰囲気の教会であることが伝わってくる。

さて肝心のサウナの情報だが、曜日ごとに男女それぞれ時間が決まっている男女入れ替え制で一回6£、学生や18歳以下の子供は4£。事前に予約しておくと昼間の時間にプライベートに使うこともできるよう。(その場合は20£程度)

HPの画像を見る限りサウナはとても小さそうなので、なるべく男性の開始時間に間に合うように行ってみた。

扉をくぐり、地下に続く階段を降りていくと、脱衣所に到達。当たり前だがここからは写真が撮れない。 非常に狭いプールの更衣室のような内装でロッカーはなく、代わりにベンチと綱引きのロープのように太いひも、それにかばんがかけられてるようにフックがついている。この簡素な感じ、本物を感じる…

どうやら既に数人がサウナを満喫しているようなので急いで脱いでサウナ室へと向かう。サウナ室の手前にはシャワー室があり、ここでまずは汗を洗い流す。水風呂は当たり前だがないのでサウナ後もここで水シャワーで体を冷やす。

さて肝心のサウナ室だが、事前に調べていた通り非常にこじんまりとしていた。真ん中にサウナ石が鎮座していて、その両端に座れるようになっている。ぎゅうぎゅうにつめて7人いけるか…といった大きさである。 特に体格の大きいフィン男児が集まれば5,6人ですっかり手狭になるくらいだ。

https://lontoo.merimieskirkko.fi/wp-content/uploads/sites/9/2017/09/21752618_1660748460632840_8458279002668781075_o.jpg 画像は公式HPより

中に入るとすでに寡黙なフィン男児が黙々とサウナに身を委ねていた。しばらくすると1段とベテランに見える男性がロウリュウをする。本場仕込のロウリュウはどんなものだろうと思っていたが、彼が石に水をかけた途端にものすごい水蒸気が舞い上がり、その一瞬後とんでもない熱風が襲ってきた。あつい、あつすぎる。特にその日髪を切ったばかりだったのも災いし耳の裏が焼けるようにあつい。

この熱さが本場フィンランドなのか…と呆然としていたのもつかの間、先程ロウリュウをした男性やはりかなりのベテランらしくその後もしきりにロウリュウをする。もうこちらは一回目から限界なので耳を熱風から守るのに必死である。これはもうある種の修行である。京都でお坊さんが滝行をするかのように、フィンランド人はサウナ行をするのである、多分。

そうこうしているとすぐに体が火照ってきて限界を迎えたので、退室。こう殺人的な熱さに身を委ねていると水シャワーがとんでもなく気持ちいい。そうか、そのためのあの熱さ…とすぐに理解する。 シャワーを浴びたあとは、日本のサウナのように外気浴する場所はないので、その代わりに脱衣所がクールダウンする場所である。 サウナの中では寡黙だった彼らもサウナから上がってくれば徐々に話し出す。ここに来るのは初めてだが、中々よくできている、もう少し大きければいいのに…等々。初めて会った人たちが、裸であることも相まって緊張をほぐしてすぐに打ち解け始める様子は微笑ましい。

そういえば、日本を旅立つ前にフィンランドでロングランを達成しているというサウナ映画を見た。その名も「サウナのあるところ」。

www.uplink.co.jp

www.youtube.com

映画といっても、いわゆるストーリーのようなストーリーはなく、90分間ずっとサウナの中でフィン男児達が会話する様子を見る映画である。その組ざっと10弱だと思うがそれぞれがサウナの中で話す話は様々、でも殆どがシリアスなものである。離婚して離れ離れになってしまった娘に会いたいとか、過去の犯罪歴を懺悔したりとか。そんな重苦しくシリアスな雰囲気を、間の悪い画面を、サウナがそしてロウリュウの蒸気が包み込んでくれる。会話の合間合間に挿入されるフィンランド雄大な、しかし凍てつくような自然と暖かなサウナのコントラストが画面の中に明かりを灯す。

普段は寡黙な彼らでも、サウナの中では饒舌に語りだす。そんなメッセージを映画から受け取ったが、まさしくそんな雰囲気がロンドンの中の小さなサウナにも確かにあった。

サウナを終え教会から足を踏み出したときロンドンは既に冬の風が吹いていたが、体もそして心も温まり雑念は汗とともに流れ落ちた、そんな気がした。

*1:特に後楽園のスパラクーアは、湯やサウナの種類が豊富なだけでなく休憩所も広々していて作業スペースもあり最高である。値段が高いのと岩盤浴コーナーによく出没するペッティング寸前カップルがたまにキズ。 

週末、パリ探訪

 

「来週末パリいかない?」

突然そう言われたのはイギリスに旅立つ直前だったと思う。せっかくユーロスターで行ける近いところにいるし、そう誘ってきた彼ももうすぐヨーロッパを離れてしまうから丁度いい機会だと思い快諾して、行くことにした。

 

出発は金曜日の夕方、セントパンクラス駅に向かうと週末に大陸に旅立つ旅行者で駅はとても混雑していた。

セキュリティーチェックと出国審査を抜けて待合室に出るとものすごい人混みで、座るところを探すのが大変だった。まだ時間があるしと思ってカフェでビールを飲んで時間を潰す。こちらのビールは5ポンド前後で500ml飲めるので日本と比べ大変オトクである。

ユーロスターは車内にカフェがあるのは別にして新幹線と同じような乗り心地で、気づいたらいつの間にかパリに着いていた。

 

早速誘ってくれた彼と合流し、ホテルにチェックイン。夕飯を食べたレストラン兼バーでほとんど英語が通じず、フランスに来た実感を得た。

 

 

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翌朝は気持ちいいくらいの快晴で、観光日和である。同行者がオペラ座の怪人の大ファンで、ぜひオペラ座を見たいというのでまずはオペラ座があるガルニエ宮へと向かう。

 

 

フランスはよく親日国で日本文化好きが多いと言われるけれど、たしかにそうだと感じたのは地下鉄のアナウンスにフランス語と英語に続き日本語のアナウンスが入ることと、やたらとキリンビールの広告が貼ってあったことだ。

   

他にはやたらSF漫画(ゲストに日本人多数)のイベントの広告があったのも印象的である。

 

そんなこんなで地下鉄に揺られること20分程度、目的のガルニエ宮に到着。

 

 屋上にそびえ立つ巨大な黄金の彫刻がとても印象的だ。

中身はというと、さすが世界三大劇場と言われるだけである。荘厳、豪華絢爛という言葉がこれほどまでに似合う建物は他にあまりないだろう。同行者は憧れのオペラ座に来れたことに大興奮のようで、サウンドガイドを片手に一人探検へと繰り出した。

この上の写真の大階段はオペラ座の怪人で有名なマスカレードが演奏される場面のモデルになったところである。沢山の観光客がせわしなく記念写真を撮っていた。

 

さて、劇場の座席の方まで見学ができるようであるので、早速中へ入ってみると漫画や映画でしか見たことがないクラシカルで立派な内装がお目見えである。

 

 区画ごとに区切られたボックス席は特別感が感じられ、なにか秘め事が行われるような、そんな神秘的な雰囲気さえ醸し出ていた。ひときわ目立つシャンデリアの奥に描かれた天井画は、どうも画風が現代的すぎると思っていたが、やはり1964年にかきなおされたもののようである。

オペラ座の怪人に出てくる、あの特等席ボックス5番席も実在し小窓からではあるが中を覗き見る事ができる。夜にオペラやバレエを観劇に来れば実際に座れるのだろう。ファンにはたまらないのかもしれない。

 

入る際にせっかくなので夜オペラを見たいなと思ってチケットの列に並んでいたら『椿姫』の当日券(もちろん見切れ席)が10ユーロで売っているではないか!多少見えなくても音楽が聞ければまぁいいだろうということで即決で購入。夜が楽しみになる。

 

 

さて、そんなこんなでオペラ座の見学を終えた我々は昼食をとり、次の目的地凱旋門へと向かう。

 

そのまま向かっても良かったのだが、凱旋門を真正面に見ながら歩けるというのでコンコルド広場から歩くことにした。 

当の広場は非常に開けた気持ちのいい場所で、凱旋門に向けてきれいなほど一直線に道路が伸びている。凱旋門に至るまでの歩道は綺麗に区画整備されており、歩いていてなんだかパリ市民になったような気分にさえなる。

 

地図では近いように見えた凱旋門までの道のりも、実際に歩いてみると結構遠かった。コンコルド広場から見ると分かるのだが、ちょっとした坂道になっておりそれも疲労を増す要因になったと思う。

 

そしてようやくついた凱旋門

その巨大さに圧巻されるばかりで、初秋(こちらではすでに初冬か)の澄んだ空によく映える。

凱旋門の周りは車道で囲まれており、近づくためには地下トンネルをくぐる必要がある。これに気づかずに車道を突っ切ろうとしていたのは今考えるとかなり命の危険があった。

 

上に登るチケットを買うのに並び待つこと数十分、ようやく階段を目の前にするが目の前には気の遠くなるような長い階段が待ち構えていた。

他のヨーロッパの歴史的建造物と同じように、古くからある建物にエレベータなどあるはずがない。ので仕方なく目がまわりそうになりながらひたすらに階段を登って中腹の休憩所にたどり着く。そこでは売店やトイレがあり、どうやらエレベータも本当はあるようだった。(足腰の悪い人用だそうである。

 

ようやくたどり着いた屋上からの眺めは、格別である。凱旋門から放射状に伸びた町並みを360度一望できる。

 

 こうしてみるとエッフェル塔の存在感がすごいことが分かる。凱旋門からの眺めが存外に良かったのでわざわざ登らなくても、とは思ったがとりあえず次はエッフェル塔に向かうことにする。

 

 

凱旋門の周りはパリの中心街といった感じでブランド店やレストラン、映画館が集まる華やかな通りだったがエッフェル塔の周りにくるとあからさまなくらいに観光地である。それはつまり、怪しげなお土産を売りつけてくる黒人の集団と、謎の手品のようなパフォーマンスをやっている集団が大量に蔓延っているということだ。

 

 

エッフェル塔の入り口まで行ってみるが、すごい行列である。このまま並ぶと夜のオペラに間に合わなさそうなのでエッフェル塔は断念する。まぁ凱旋門登ったし、エッフェル塔のパクリの東京タワーには登ったことあるし…と思いなおす。

 

急いで地下鉄に乗り込み再びのオペラ座。今度は昼間に閉じられていた正面入口から堂々と入る。というかオペラを見に来るなら昼に見学に来る必要なかったんじゃないかという気もするけど、まぁ旅というのはそういうものだ。

 

あてがわれた席は、ほぼ舞台下手の真横に位置するボックス席の二列目。なるほど、前の人と隣のボックス席の人の頭で結構舞台は隠れそうである。

 

ドキドキしながら待って、ついに公演がスタート。

ん、舞台に大きく鎮座しているスクリーンが光りだしてインスタを流し始めた???これは宣伝かなにかか???と思っていると舞台が回転しだし、パーティー会場の場面。みんなきらびやかなドレスタキシードをきている???ここは21世紀???椿姫って19世紀の話じゃなかったっけ??と頭に?が無数に浮かんでいると乾杯の歌が流れ出す。

ますます混乱を極める頭だったが、落ち着いて曲に集中する。

 

そんな調子で頭に?が浮かんだまま第1幕が終了し休憩となる。同行者もあれ?となっていたようで、調べるとどうやら今年の椿姫は舞台設定を現代に移した新版のようである(https://www.doitinparis.com/en/spectacle-opera-garnier-24715) 

 

なるほど、オペラ座もいかに顧客を掴むかということに必死かがわかる。演出にオーストラリア人の映画監督Simon Stoneを起用して再構成されたのがこの作品らしい。

背景の巨大なスクリーンを上手に使って登場人物の心理描写やSNSでのやりとりを移すなど物語をよりわかりやすく面白く伝えようというが制作側の心意気が伝わってくる。

でも主人公のヴィオレッタが高級娼婦からいわゆるインスタグラマーのパリピになってしまったのはあまりピンと来なかった。

 

まぁどういうからくりかがわかったので第二幕以降は腰を落ち着かせて見ることができた。もうとにかくオーケストラの演奏が素晴らしく、それ以上にヴィオレッタ役のソプラノの歌唱が最高であった。ヨーロッパの本場の超一流のオペラをたった10ユーロで見ることができたなんて、それこそ夢のようだ。

 

 

昼間はよく見なかったオペラ座正面の壁を終演後よく見てみると著名な音楽家、例えばハイドンモーツァルト、ベートベンらの彫刻が彫られていることがわかった。ちょっとあくどいなぁと思ってしまったのは内緒である。

 

一日中歩き回り夜にオペラまで見れば体は疲れ切っていて、ホテルに帰るとすぐ寝てしまった。翌日は昼のユーロスターでイギリスに戻ることになっていたのと、疲れからから少々寝すぎてしまったようで時間があまりとれそうになかった。じゃあ近くを散歩するかと思って歩いていると、実はホテルのすぐ近くのモンマルトルの丘があることが判明。

 

モンマルトルの丘といえば、映画『アメリ』で主人公が丘の上で密かに某考え事をすることで有名なところである。あいにくその日の天気は曇天だったが、どんな景色が見えるかワクワクしながら丘へ向かう。

 

 

この丘の上に立つのがサクレ・クール寺院。丘からの眺めでも十分に見晴らしが良かったが、あの上からみたらどんなだろうかと思い早速登ってみることにする。が、凱旋門のときと同様長い階段を登る羽目になった。むしろこちらのほうが寺院ということでより設備が旧式な分苦労した。またしても目が回りそうになりながら階段を登ると、やはり上からの見晴らしは抜群であった。

モンマルトルの丘、という名前から分かる通りこの寺院が立っている場所は標高が結構高いようで、エッフェル塔凱旋門よりも高い位置からパリ市街を一望できるようだ。惜しむらくは天気があまり良くなかったことで、晴れていたらなお一層抜群の眺めだったろう。

 

 寺院の壁には観光客が記念につけたと思われる落書きが沢山あって少し閉口した。日本人が書いたらしきものもちらほら見つけた。

そうしているとタイムリミットが近づいてきたのでパリ北駅へと移動してパリ訪問は終了。帰りのユーロスターではイギリスへの入国検査があるのだが、ヒースローと同様にここでも日本人ならeゲートで通過できる。とても便利である。

 

二日間のパリ観光を振り返ると、他にも行くべき観光地は沢山あるためまたパリそしてフランスを訪れたいと思う一方で、パリに住みたいとはあまり思わなかった。

というのも、まず当たり前だが英語が通じづらい。初日に夕飯を食べたところでは英語を喋れる定員は一人だけで、その彼の英語もかなりおぼつかなく注文に苦労した。

これはまぁフランス語を覚えろよということになるけれど、もうひとつ気になったのはフランス人は皆自由で時間の流れ方がちょっと違うと感じたことである。主にお店の接客のことを指しているが、途中寄ったスタバでは店員が知り合いの客とずっと話しながらドリンクを作っていて順番をすっとばしたりかなり提供に時間がかかっていた。水出しコーヒーなんて保存していたコーヒーを注いで氷入れるだけなのに10分くらいは待ったんじゃないかと思う。レストランで会計を頼んでもいっこうに請求を持ってこないということもあった。

あとは夕方地下鉄に乗ったとき、どこかのサッカークラブの少女たちが、試合帰りだろうか、興奮して電車内にもかかわらずスピーカーで音楽を大音量で流しながら歌い踊っていた。結構車内が混んでいたのにコーチの人も注意せずにずっと踊っていた。ちょっと前にtwitterで話題になった、ラグビーの試合終わりの京王線で興奮し暴れていたフランス人たち動画のことを思い出した。

滞英日記-0日目

来週から3ヶ月間、イギリス・ロンドンに研究で滞在することになった。なんだか自分の人生の重要な分岐点になりそうなので記録に留めておきたいと思い久しぶりに筆を執った。

と、書き出したのが出発の前々日ほど。案の定筆はストップしたままでイギリスについてから一週間と半ばが過ぎようとしている。が記録のためにやはり経緯を書いておきます。

現在自分は博士課程2年生。イギリスに行こうと決めたのは今年の3月頃だったと思う。当時は思ったように研究が進んでおらず、精神的に比較的つらい日々を過ごしていた。もうこのまま漠然と何の成果もあげずに2年を過ごして前の論文の結果で博士論文を書いて大学院を出るのかなど考えたりしたものだった。

多分そんなふうに過ごすこともできたのかもしれない。だけれど、このまま閉塞感に苛まれる東京にいても拉致があかない、思い切って環境を変えようと思ったのがきっかけだった。

幸い、自分がもらっているリーディング大学院の制度で海外の研究機関への滞在を補助するプログラムがあったのでこれを利用することにした。(実際には、学振の若手研究者海外挑戦プログラムというものに応募もした。残念ながらこちらは落選したので、代わりにリーディング大学院の制度を使うことにした。

さて、海外に行くこと決めたが行き先をどうするかが次の問題である。行き先を間違えると、不意な時間を過ごすこと間違いなしだからだ。 セミナー等で東京に滞在したときに知り合った海外の教授たちは何人かいるのだが、残念なことに全員非欧米圏の大学だった。

やはり研究の中心は欧米、特にアメリカである。資本もあるがそれ以上に圧倒的に優秀な人材が集まっている。これらの地域には直接の知り合いがいないので、知り合いの知り合いのつてを頼ることになる。アメリカにしようか、ヨーロッパにしようか迷った末にイギリスに行くことにした。理由は主に以下の通り。

  • 滞在先の教授が現在の指導教員のポスドク時代の元ボス
  • これまでの自分の研究内容と滞在先の教授のそれが近かった
  • パブにいきたい(決してこれが最大の理由ではない。誤解のないように)

恐る恐る彼にメールを出したところ、親切にも受け入れを快諾する返事が帰ってきて、なんとか手続きを済ませ無事にイギリスに到着し現在に至る。

一週間が経過しこちらの生活には随分慣れてきたつもりだが、日本とは違うところも多々ある。そういう違和感を大切にして過ごしていきたい。また、こちらでの生活の様子もなるべく書き記しておきたい。(こう書いておくことでモチベーションをあげることにする。)

2019年2月に見た映画まとめ

今月は、中旬に出張がありその準備で忙しかったので、毎週映画館に行くことは叶わなかった。 だが、Netflixと合わせて4本見れたのでよかった。後実は某日に試写会にも行ってきたのだが、守秘義務があるためここではコメントしないでおく。

来月、再来月とアカデミー賞関連映画の公開などもあるし明日からも積極的に映画を見に行きたいと思う。

では、今月見た映画をまとめよう。

1.映画館にて

ジュリアン

julien-movie.com

youtu.be

ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞、また『万引き家族』も受賞したセザール賞を獲得した作品で、DV夫から母親を守るため必至に生きる息子ジュリアンの話。

上記に貼った予告から察した雰囲気では両親ともについている親を知っているジュリアンがキーとなるサスペンスもの…?

と思ったら全く違う話であった。誤解の原因の一つに邦題『ジュリアン』が一役買っている気がするのだが。

その実は、予想した意味とは違う意味でサスペンス。BGMを使わず不安を煽るような環境音と、各登場人物の視線にフォーカスしたカメラワークは観客をドキドキさせるのに十分だ。 父親のしつこい脅しに耐え続けるジュリアンの描写は痛々しく、華やかなパーティーシーン(ここのカットはどれもとても綺麗で美しい!)でも、ジュリアンの家族らのどこか不安げな面持ちには物語の行く末がうまくいかないことが暗示されている。

このように社会派サスペンスな映画だと一見みえるのだが、その予想をさらに上回るのがラストシーン。ここで描かれる怒涛のホラー的展開は凄みがあり、それまで意図的に静かに作られた画面が爆発する様は圧巻。

時限爆弾がカウントダウンをはじめ、爆発に至るまでを描いたような作品である。

ちいさな独裁者

dokusaisha-movie.jp

youtu.be

第二次世界大戦末期、敗戦濃厚なドイツでは兵士の脱走とそれに伴う付近の村における略奪行為が頻発していたそうである。 主人公もそんな脱走兵の一人。

冒頭、軍から脱走した彼を酒を飲みラッパを吹きながら車で追いかけるドイツ軍たち。まるで狩りを楽しむかのような象徴的な始まり方で、戦争末期のドイツ軍の状況を端的に説明している。

命からがら逃げ出した主人公が偶然見つけたのがドイツ人将校の制服。ここから彼の人生は狂い出す。

たまたま通りがかった上級兵を手下に引き入れた彼は近くの村へと乗り込み、早速将校のフリをし始める。もともと機転が利くのだろう、多少の葛藤や恐怖の描写もあるが、基本的には大胆不敵に身分を偽り手下を増やし(酔っぱらいの一人は明らかに彼の正体に気づいている風であるが)行動していく。

次の滞在先である、犯罪者収容所では法律を無視し彼も同類である脱走兵や盗人たちをユダヤ人収容所ばりに処刑していく。ユダヤ人ではなく、同胞であるはずのアーリア人も容赦なく殺す描写を通じて、彼が完全に変容してしまったことが浮き彫りにされる。

その後も彼は勝手に自身の名前を冠した"親衛隊"を名乗り、白旗を掲げた市民を殺害し所持品を略奪、泊まったホテルでは乱痴気騒ぎを繰り返したりと傍若無人の限りを尽くす。

今作品の監督は「 彼らは私たちで、私たちは彼らだ。過去は現在なのだ。」 と述べているが、劇中では権力のシンボルとして制服を用いることでその威力とそこに吸い寄せられる人間の暗部を躊躇することなく切り取り描いている。 驚くのは、この映画が実話を基にしていて、主人公の脱走兵はなんと齢21歳という若さだったそうである。なんと大胆不敵なことだろう。

エンドロールで彼ら親衛隊が現代ドイツの街で暴れる演出は、「帰ってきたヒトラー」を連想させる。 現在のドイツの政治情勢(保守派の台頭)を考慮した上で、こうした演出の映画が一つと言わずでてきたというところにドイツ映画人らの危機感の現れを感じた。

女王陛下のお気に入り

www.foxmovies-jp.com

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主演のオリヴィア・コールマンがアカデミー主演女優賞を獲ったことが記憶に新しい。自分が見に行った日が、まさしくオスカーの発表の日だったこともあるのか、映画館はほぼ満員だった。

18世紀、フランスと戦争中にあるイギリスの王室の話。

気まぐれな性格の女王アンはその側近サラに公私とともに頼りきっていた。 そんな折、親戚の伝手で没落貴族のアビゲイルが宮中にやってくる…というあらすじ。

女王をめぐる、女性3人の愛憎関係に1秒たりとも目を離す暇はない。相手をいかにだしぬくか互いに策略を巡らせながら、気まぐれな女王はその様子すら楽しもうとしている。女王役のオリヴィアコールマンはまさに怪演であり、一度見た時から脳裏にその姿が焼き付いて離れなくなってしまうほどである。

エマストーンのさらりとした表情の中に隠れた悪女の演技には思わずニヤけずにはいられない。彼女の作品は色々見ているけど、今作の演技の振れ幅は素晴らしく彼女の違う魅力を見せてもらった。

イギリス宮中の煌びやかな部分も、醜悪な部分も人間の欲望というものをたっぷりと描いている良作である。 ラストシーン、気丈に振る舞うサラとそれと対照的に空虚な目をしたアンとアビゲイル、そして無垢なウサギたちの対比はまさに諸行無常である。

2. Netflixにて

ROMA ローマ

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各地の映画賞をかっさらっていき、ついにはアカデミー賞でも外国語映画賞を始め3つの賞を受賞した作品。

ローマというとイタリアの話かと思うかもしれないが、舞台はメキシコの高級住宅街にある"ローマ"という場所。そこに住む白人家族の家で住み込む家政婦が主人公のお話。

カメラが6Kの非常に高性能のものを利用しているにもかかわらず、あえてモノクロで撮られている。非常に画角が広くほとんど一貫して俯瞰的に、ゆったりと動くカメラワークの中で登場人物たちの生活を非常に写実的に切り取っている。ワンカットワンカットがまるで静物画を見ているような美しさを秘めている。 彼らの地続きな生活をずっと見ているような、そんな感覚に陥る。

役者はほとんどが素人らしい。それらを逆に生かして撮影はアドリブを多用しながらすすめられたとか。こことカメラの使い方の相性がいい。

話の流れは、登場人物、主に家政婦の主人公が直面する問題や不条理とどう向き合って人生を紡いでいくかということが中心。 家政婦として働く主人公の機敏な感情を見事に画面上にすくい取っていて鑑賞後の余韻が心地よい。

こんな上質な映画がNetflixで見られるなんて、贅沢というべきか。でも映画館のスクリーンもぜひともみたい。アカデミー賞をとったら、どこかでかからないだろうか、と思っていたら本当に取ったので期間限定でいいからやってくれないだろうか。

2019年1月に見た映画まとめ

勝手に今年の目標の一つに月に最低4回は映画館に行って映画を見るに設定したので、目標の到達確認と備忘録を兼ねて毎月見た映画をまとめて記録していきたいと思う。

今月は2週目まで海外に行っていて、そもそもスタートが遅かったこともあって映画館で映画を見たのは3回になってしまい、早速目標が達成されないこととなったがトータルでは6本見れたのでペースとしてはいいのではないだろうか。

1. 映画館にて

マチルド、翼を広げて

映画『マチルド、翼を広げ』公式サイト

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精神障害を持つ母親とその娘マチルドの親子の愛情を描いた話。

何気なしに見る映画を選んだので、予備知識なしにみたら、突然フクロウが喋りだしたので驚いた。

マチルドの母は既に離婚しており、精神障害を持っているが故に孤独である。一方のマチルドはというと、そんな世間的にみたらキテレツな母親と一緒にいる、ということで学校のクラスメイトからはいじられ孤独である。

孤独同士の親子がお互いに懸命に生きていく、そしてその間を繋ぐ存在としてのフクロウが物語を進ませていく。

途中挿入されるマチルドの作り話と思われる、童話的で幻想的なシーンが物語と彼女の深層心理を暗示しているとともに非常に詩的でフランス映画らしい。

フランス映画らしさ、といえば主役のマチルドのファッションがオシャレすぎる。9歳とは思えないほどのセンスの良さだった。 本編とは全く関係ないが、途中ある小学校の学芸会で歌う合唱曲がとてもプーランクっぽい和音と進行で、こんな難しい曲を小学校でやるのか、と思った。エンドロールを見ると、どうやら本当にプーランクの曲だった。

A GHOST STORY (ア・ゴースト・ストーリー)

映画『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』公式サイト youtu.be

幽霊が主人公の映画。 妻と二人で暮らす男が交通事故で死んだあと地縛霊となり元住んでいた家に住み着いて時を過ごしていく話。

特徴

  • 画角がユニークで、アスペクト比が4:3かつ画面のエッジが丸くなっていてレトロな雰囲気。
  • 構図と色彩感に非常に監督のこだわりが感じられる。シンメトリックな構図、彩度少し落としめのフィルムカメラの質感。
  • セリフが非常に少なく、画で魅せる映画である。(長回しでウトウトしてしまったけど

非常に幻想的な話なのだが、死んだあとも妻のことを思い孤独に過ごす主人公の幽霊が切なすぎる。

彼女との思い出が詰まった家から出ることもできず、新たな人生を選んだ妻を追うこともできず、新しく入居してきた家族には半ば八つ当たりをする。

しまいには、幽霊にもかかわらず辛くなったのか投身自殺を図る。ここで奇跡が起きたようで幽霊の思いは時を超え、その思念は過去へと遡る。

ここで、冒頭の家で起こる怪奇現象の謎が明かされるわけだが、そうして時を超えた彼はようやく最後にやすらぎを得ることができたことは救いである。

非常にアートで見応えのある映画だった。

劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel II. lost butterfly

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言わずもがな、な大人気PCゲーム・アニメの劇場アニメである。

学生の頃、多分最初にオタク仲間にそそのかされて『空の境界』を読んでから、奈須きのこにハマっていったのが懐かしい。原作のゲームも寝る間も惜しんでプレイしていたような記憶がある。

今回は、3人いるヒロインいるうちの桜がメインのルートで、一番エログロ描写やストーリーが激しく賛否両論が分かれる話である。

原作から家庭用ゲーム機に全年齢版として移植する際、上記の描写が当然ながら修正されるわけなので、今回の映画はどうなるのかしらと思って見に行ったら、意外とそのままに描いていてよかった。(とはいっても原作をやったのが過去の彼方なので正直あまり覚えていない。

劇場版ということで、制作に相当のお金と時間がかかっているのが分かる作画である。中盤の戦闘シーンのグリグリ動くカメラワークは流石の迫力。もはやエヴァだった。

あとは、中盤の雨が降る中抱き合うシーン、実写ドラマや映画のような構図でありながらアニメにしかできない動くカメラワークが面白かった。

さて、最終章は来年の春。どちらのエンドになることやら。

2. Netflixにて

消されたヘッドライン

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もともとはイギリスBBCのサスペンスドラマで、それのハリウッドリメイク。

ある日発生した殺人事件とその直後に起こった女性の自殺事件が徐々に結びついていき…という推理サスペンス。

主人公は警察ではなく新聞記者。ラッセルクロウのくたびれた中年男性の演技は貫禄たっぷりである。

時間を経るごとに、巨悪が明らかになっていき…とどんどんスケールがアップしていきスリルも増していく中、まさかのオチには消化不良感が否めない。

例えば、さらなる巨悪が明らかになり事件は解決とは程遠く…の方が後味が良かったと思う。 レイチェル・マクダミアスがかわいい。

わたしは、ダニエル・ブレイク

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現代イギリスの暗部を深く抉り出したケン・ローチの渾身の作品。

彼は病気に蝕まれたのではない、国家に衰弱させられていったのだ。

シングルマザーと彼女の子供との交流を機に生活に僅かながらの希望を見出していくダニエルと観客に残酷な現実が突きつけられる。

私達が普段使うコンピュータ、インターネット、SNS。そんなものとは全く無縁の主人公は情報弱者であり社会的弱者。 決して日頃メディアがすくい上げることのない彼らの現実を正鵠に射るこの作品は現代民主主義国家の社会福祉制度にそびえ立つ壁をありありと描写している。私達は決してそれから目を離してはいけないのだと訴えかけてくる作品。

アメリ

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とってもキュートなフランス映画。 アートな側面も強いが脚本はそこまで破綻しておらず、楽しんで見れる。

伏線の回収やカットのつなげ方が少々唐突だったり分かりづらい部分もある。

赤や黄色など暖色系の色を多用していることも、シュールな内容にもかかわらず画面から暖かくほのぼのした雰囲気を出す要因か。

幼い頃から引きこもり空想の世界に生きてきた主人公が、今度は他人の幸福を手助けするようになるが、自身の幸せとなると奥手になってしまい… という乙女な描写が可愛すぎる。